取材日:令和2年3月6日(金)

取材者:埴原有希士 

 

 今回は若手の書道家であり、情熱人な村野瀧玖(むらの ろうきゅう)さんと対談です。若くして和文化の業界で頑張っているホープです。若い担い手を応援したいという気持ちがありましたので、今回もとても有意義な対談となりました!

 

書道家 村野瀧玖さんプロフィール

 

 書道家と言えばお堅い感じ、、、。 そういうのを覆す弱冠26歳で海外に招致された日本一若くて才能溢れる書道家です。

村野瀧玖プロフィール 毎日書道会に所属。 しかし、20歳のときに毎日展に入選して以降、自分の書を探すべく独立。 人を魅了する作品と評価され、日本国内のみならず海外展でも出展。

 

~書道歴に関して~

16歳 書道部に入部

17歳 埼玉県高校書道展 奨励賞

18歳 全国高等学校総合文化祭 出場

19歳 創玄展 二科賞

20歳 毎日展 入選 創玄展 二科賞

21歳 東日本書展 秀作

22歳 文教大学 卒業展 個展開催

23歳 佐久間太熈堂に勤める

24歳 国際文字文化検定委員

25歳 韓日書藝名家展 出品 埼書展 奨励賞

26歳 日中韓を芸術で国際交流をする展示会の日本の推薦者に選ばれる

 

 上記の歩みを見るだけでもとても興味深い逸材です。特に海外でのご活躍が顕著です。ますます対談が楽しみになりました。

 

埴原:本日は対談ありがとうございます。よろしくお願いします。

 

村野さん:よろしくお願いします!

 

埴原:若くして和の分野で活躍する方を応援したいという気持ちが以前からありました。今日はそんな意味でもとても楽しみにしていました。現在おいくつですか。

 

村野さん:27歳です。

 

埴原:お若いですね。プロフィールはざっと拝見しましたが、改めて書道の道に入ったきっかけを知りたいです。書道はどういう経緯で始めたんですか。

 

●書道との出会い

 

村野さん:私の場合は本当に特殊なんですが、高校部活は本当は弓道部に入りたかったんですよ。小学校で剣道を、中学校で柔道をやっていましたから。

実際に剣道部に入部届を持って行ったんですが、たまたま顧問の先生が不在で、新入生をいろんな部活動の先輩が新入生を勧誘している中をぐるぐる回っている時に、「そこの生徒走るんじゃない!」とものすごい勢いで叱られました。しかも、走っていた罰として、「お前書道部な!」と(笑)

 

埴原:まさかそんなきっかけで入部するとは、、(笑)

では好きでもなんでもなく、罰で始めたと(笑)

 

村野さん:そうなんです!ちょっと理由があって、その当時書道部は部員が居なくて廃部寸前だったんです。それで無理やり入れられた感じですね。

 

埴原:それは顧問の先生も上手くやりましたね。という事はマンツーマンでの指導だったんですね。

 

村野さん:1年間びっちり教えられました。1年で退職されてしまったんですが、次の顧問の先生が熱血で。「君を必ず全国大会に連れていく!」と言ってくれました。

 

埴原:いい先生に恵まれましたね。ちなみにどうの様な書を学んでいたんですか。

 

村野さん:中国の古典を主に学んでいました。臨書と言って、当時の名人の空海さんや最澄さんの書を模写する練習方法です。

 

埴原:なるほど。ちなみに書道の楽しさに気付いて、まじめに練習しだすのはどのタイミングだったんですか。

 

村野さん:入部して3ヶ月くらいの時ですね。楽しさに気付くとも少し違う話になるんですが、学校で少しトラブルを起こしてしまって、その時に顧問の先生が全力でかばってくれたんです。その時に、この先生に付いていこう。書道にまじめに取り組もうという気持ちになりました。

それと、その当時祖父母の介護があって、その高校に入ったのも介護の件で妥協した結果でもあったんですが、、。その祖母が亡くなる時に遺言として、その先生に付いていきなさいと言われました。その件も含めてですね。

 

埴原:何だか巡りあわせと言うか、人と人の出会いと言うか。本来の書道の魅力から入るのとはまた別のアプローチからという感じで面白いですね。

 

村野さん:祖母には見せられなかったんですが、練習の甲斐もあってその高校から初めて埼玉県代表として全国大会に出場しました。このタイミングで書の道を歩んでいこうと強く考えるようになりました。この出場がきっかけで、テレビや新聞にも取材していただきました。

この後大学進学後も書道のゼミでのめり込みました。更に高校一年生の時に退職された元顧問の先生の元でも勉強しました。先生は高校の教員でもあったんですが、書道の世界においても大人向けのコンテストの毎日展の審査員でもあって。若いお弟子さんはいなかったので、とても可愛がって頂きました。そのお陰で、入選すれば書道家として認められるような賞に、一発で入選しました。

 

 ●新しい美術界を作りたい!

 

埴原:すごいとんとん拍子の出世ですね。努力と先生の指導の賜物ですね!

 

村野さん:はい。そこまでは良かったんですが、それ以上の登るには師匠の実力、弟子の実力、コネと謝礼が必要になったんです。

 

埴原:なるほど。ありそうな話ですね。

 

村野さん:賞を買う位なら、新しい芸術界を作りたいなと考えて、しがらみから飛び出しました。そして今は活動に賛同してくれる仲間を集めています。

 

埴原:なるほど。活動の背景と言うかきっかけにはそんな経験があったんですね。

芸術界の仲間と言うと、なるだけ古い慣習に染まっていないような方を求めていると。若いですし、これから何でも出来ると思います。すごく期待が高まります!

 

村野さん:ありがとうございます。そうなんです。必ずしも和に限りませんが、平面作品の若い芸術家が食えるようになったら嬉しいと考えています!業界の古い慣習をぶっ壊してやる、っていう気持ちです!

それ以外にも、日中韓で展覧会を積極的に行っています。このパンフレットがそうです。

国同士は険悪でも、国民は違う、仲良くやっていけるんだよって事を、芸術を通して実現したいですね!

 

埴原:素晴らしい活動ですね。私も新宿の飲み仲間で、韓国や中国の方がいるんですが、皆さん良い人たちです。国でなく、個人を見る大事さは、身に染みて分かっているつもりです。

 

村野さん:海外での活動はこれからもしっかりと続けていきたいと考えています。

 

 

●書道の魅力

 

埴原:話は変わりまして、書道自体の魅力を教えてください。

やはり良さと言うか、知識が無いと良いものにも気付けないのが人の世の常です。

書道の魅力とは一体何でしょうか。

 

村野さん:魅力の一つは文房四宝ですね。墨、筆、紙、硯の四つです。最低限この四つの道具があれば書道は出来ます。

特に紙にはこだわりがあります。紙には手漉きか、そうではないものがありますが、当然手漉きが良いです。紙の風合いあっての書道だと。

 

埴原:なるほど。道具自体の魅力という事ですね。この点はとても分かります。剣術も、まず刀自体に魅力が溢れています。

にわか知識ですが、硯なんか高いものがあると聞いたことがある様な気がします。ちなみに、この中で言うと、特に高価になりやすい道具はどれでしょうか。

 

村野さん:道具で言うと間違いなく筆ですね。硯は確かに高いものが多いですが、道具と言うより美術品の様な扱いです。

 

埴原:なるほど。そんな状況も刀と似ていますね。書道を学ぶ事自体の魅力はいかがですか。

 

村野さん:最初は臨書から入りますが、実力が身に着けば創作を行えるようになります。自由に書を楽しめるようになります。

 

埴原:なるほど。修行を続けてこそその楽しさに到達できるわけですね。

最近の方は何かを始める際に、始めるべき理由が提示されていないと取り組まない方も増えてきています。そうじゃない。やって初めて分かる楽しさもあるんだよと。書道も武術も同じだと思うんですが、ただ技術を学ぶだけではなく、その背景にある哲学やライフスタイルと言うか、そういった大きなものを習得できる事も魅力の一つだと思うんです。

 

村野さん:すごく良く分かります。皆さん、書道は本当に楽しいですよ!

 

埴原:本当に情熱の書道家と言った感じで、私もますます応援したいなと思います!

今後の活動について抱負を聞かせてください。

 

村野さん:書道だけで食べていくのは本当に大変です。所謂商業書道家と呼ばれている人たちでも、食べていけているのは10%くらいかなと。商業書道家と呼ばれている人たちは、古典などから基本を学ばずに、いきなり創作から入るような方も多いです。実はそんな書道家の先生もやっていたりします。やはり古典や伝統は大事だと強く思います。

伝統の書道を守りながら、公平な美術界も作りたいですね。もちろん国際交流も続けていきます。

 

埴原:ありがとうございます。それでは読者へ向けてメッセージをお願いします。

 

村野さん:「美術界と国を革命します!」

 

埴原:情熱的!本日は本当に楽しかったです。ありがとうございました!

 

 

村野さん:こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました。今後もよろしくお願いします!

 

 <対談の感想>

情熱という言葉がぴったり当てはまる様な、そんな書道家の村野さんでした。話していても普通の好青年で、堅苦しいイメージとは真逆。新しい美術業界を作りたい。国と国の繋がりを良くしたいという、とても重要な目標に向かって、全力で邁進しています。微力ながら、当協会も活動を応援していきたいと強く思いました。